槍ヶ岳(北鎌尾根)山行報告
                                              記録:N.U
●日 程    2001年8月11日(土)〜15日(水)
●交通機関  JRその他
●参加者    T・F(CL)、K・F、A・T、N・U
●コース及びタイム
       8/12 中房温泉・・・・・合戦小屋・・・・・燕山荘・・・・・大天井ヒュッテ
             6:10      8:46~9:04    9:50~12:00     15:00
       8/13 大天井ヒュッテ・・・・貧乏沢出合い・・・・北鎌コル・・・・槍ヶ岳・・・・槍ヶ岳山荘
             4:00         6:30         9:30     17:30    18:00
       8/14 槍ヶ岳山荘・・・・槍沢ロッジ・・・・横尾山荘・・・・徳沢・・・・上高地・・・・信州会館
             7:00        9:40      11:15    12:55    15:15    20:00
●8月11日(土) 晴れ
 憧れの槍ヶ岳、しかも難コースの北鎌尾根とあって不安の日々を過ごした。Fさんが時間間際にプラットホームに顔を見せ、F女史の励ましを受け、期待と不安を乗せて、電車はホームを後にする。Aさんとは松本で、K・Fさんとは燕山荘で合流するとのこと。大阪始発の[急]”ちくま”では、順番待ちしたが席があいにく一人分しか確保出来ず、Fさんと交替で座る事にした。
●8月12日(日) 小雨
 松本駅でAさんと合流、大糸線に乗り換え穂高駅まで、穂高駅前からタクシーで中房温泉へ向かう。予定より早く到着、休憩(軽い朝食、トイレ)後、(6:10)いよいよ登り始める、小雨なので傘をさす。三人とも足取りも軽やかに、第一ベンチ、第二ベンチ、第三ベンチ、富士見ベンチと高度をかせいでいく、合戦小屋(8:46~9:04)で小休憩。さらにしばらく歩き燕山荘到着(9:50)、ここでK・Fさんと合流、初めて四人揃う、私は初めてなので燕岳(標高2763m)まで往復する。燕山荘内にて昼食。ここからは、表銀座コースの素晴らしい展望を満喫しながら快適に歩き、今夜の宿大天井ヒュッテに到着(15:00)。夕食時、F女史より頂戴した餞別で赤ワインを購入、明日の成功を祈って乾杯した。外は小雨だが、予報ではどうやら明日は晴れるらしい。私は、明日の北鎌尾根のことが心配になり、なかなか寝付かれない。両サイドからは高いびきが聞こえる。
●8月13日(月) 快晴
 外は星空だぞと言う声で目が覚める、いよいよ北鎌尾根だ、身が引き締まる思いがする。いそいで身支度をし、外に出る。見上げると、満天の星空が今日の成功を暗示しているようだ。軽く準備運動をし、予定どうり(4:00)ヘッドランプを点け出発する。北鎌尾根の分岐までわずかな距離、ヘッドランプの先に小さな道標を見つけ、これより貧乏沢を下降する、いきなりの藪こぎ、前日の雨で濡れている、落石に注意をしながら慎重に足を下ろす、緊張の連続だ、時々左側の藪を巻く。薄明るくなった空に目をやると、はるか上空北鎌尾根の先峰に朝日が当たり始めた、きれいだ!さらに慎重に下降し、時々顔を上げる、ずいぶん見え始めた尾根の左端に突然、朝日に染まった三角錐の鋭い峰が見えた、槍だ!さらに下降を続け、ようやく天上沢に着く(6:30)、水量は多い、天上沢の左岸をしばらく遡上する。いきなり後方で落石らしい音が谷いっぱいに響き渡る、恐ろしい・・・広い河原に出る、やっと緊張が解ける、朝食の弁当を一気に食べる、水が美味しい。ずいぶん明るくなった、目の前には東鎌尾根が青い空をバックにはっきりと見える。体力も少し回復し、広い河原をまた歩き始める、右上に北鎌沢の右俣が見える。ここから北鎌沢に入り、大小の岩に気をつかいながら登る、傾斜がきつい、しばらく登ると左俣との分岐、ここで小休憩、流れ落ちる水を手ですくい夢中で飲んだ、冷たくてとても美味しい、ボトル一本補給する。さらに急傾斜の北鎌沢の右俣を、息をきらしながら時に草を掴み這って登る。なぜこんなにつらい思いまでして登るのだと心の中で自問自答を繰り返す。やっとの思いで北鎌沢のコルにつく(9:30)。とても疲れた、もう一歩も歩けない・・・ここはテントが一張りはれるぐらいの狭い場所、しばらく休憩、他の三人もかなり疲れているようだ。ここからさらに8時間と聞くと気が遠くなる。体力も回復しないまま、ハイマツの茂る急なヤセ尾根を登る。私も必死に、先頭を行くFリーダーについていく、後ろを振り返る余裕はない。天狗の腰掛けを過ぎると正面に独標が見える、どっしりとして迫力がある。このあたりから本格的な岩尾根が連続する。落石を起こさないよう、体のバランスを崩さないように慎重に歩く。後方の二人の先輩のアドバイスが心強くありがたい。独標をトラバースするころから、先行するパーティが何組か見え隠れする。他にも登山者があると思うと、なぜか安心する。このあたりは、ルートファインデ゙ィングの非常に難しいところだ、これからが核心部だろう。時々、明確なルートが見えたりするが、先で行き詰まったりしている。慎重な行動が要求される。的確なルートファインデ゙ィングをしながら我々を引っ張ってくれるFリーダーが心強い限りだ。何度上り下りを繰り返しただろう、何度目かの小休憩、ザックを降ろし顔を上げる。大槍が圧倒的な迫力で目の前に現れる。大岩がゴロゴロする斜面を登り、やっと大槍の真下に着く(17:00)。ここでヘルメットを被りハーネスを着ける。Fリーダーがザイルをカラビナに結び”行くぞ”と声をかけ登っていく。しばらくして”上がって来〜い”という合図と共に私が登る、傾斜もきつくなくホールドもたくさんある、もちろん慎重に登る。続いてAさんが登り、最後にK・Fさんが上がってきた。二人ともさすがにベテランだ、難なく上がってきた。三ピッチで頂上の真下まできた、もう少しだ。ここから先はザイルなしの岩登り、山頂から登山者が見ているのがわかる。(17:30)山頂にある祠に着く。Aさん、K・Fさん、最後にFリーダーが上がってきた。あいにくガスがあって展望はないが、四人で登頂成功を祝う、とりあえず、ヘルメットとハーネスは装着したまま記念撮影、時間も遅いので早々と降りる事にした。それなりの格好をしているので、ぶざまな姿は見せられない、とにかく慎重に降りよう。(18:00)槍ヶ岳山荘に到着、ここまで14時間、長い長い一日がようやく終わった。
●8月14日(火) 快晴午後雨時々雷
 我々の成功を祝福するような素晴らしい天気、K・Fさんは次なる山に向け早発ち、残る三人でゆっくり上高地に向け下山した。上高地〜新島々の途中で交通事故があったらしく大渋滞。信州会館に着いたのが午後8時、白馬組の皆さんには大変ご心配をかけました。

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