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剱岳(源治郎尾根)登山報告書
「源治郎尾根:剱岳(2998m)の頂上から剱沢に向けて高度差950m、北に長次郎谷、南に平蔵谷、途中に2つのピーク(T峰:2709m)をもつ」
/14(木)  (9:00)室堂到着、冷たい雨に強い風、(9:30)Y班と別れ雷鳥平へ向かう、雷鳥平から剱御前小屋まで歩行距離で約2kmの登り、(11:50)剱御前小屋到着、小休止。気温が低いため熱いものを注文。(12:00)Y班と定時連絡、無線機で呼ぶが応答なし。昼食後、剱沢小屋に向けて剱沢を下る。雨の中、可憐に咲き誇るチングルマに癒されながら降りていく。(13:15)三田平テント場に到着。70〜80張りのテント有り、相変わらず冷たい雨が降る、風もある、雨の中でのテント設営は辛い。テント内で暖房を兼ねたランタンを点ける。明日の天候が気にかかる。
/15(金) 曇り後晴れ6:40)早朝、頂上がガスに隠れていた剱岳が、今は全く見えず視界が悪い。天候の回復がわからず、残念ながら今日の八ツ峰からの本峰アタックは断念した。明日に備えて休養しよう。14時過ぎより気温上昇、どうやら天候回復に向かっているようだ。(15:30)剱沢小屋テラスにてY班と合流、昨日以来無線機での連絡がとれず、多少予定より遅れていたので心配していた。まずは安心、互いに昨日の報告をしあう。
14時過ぎよりガスが晴れ、威風堂々とした剱岳が次第にその全容を見せはじめる、16時ごろ(2年越しの)山頂がやっと見えた。
右からT峰(2709m)U峰()が見えます。
/16(土) 快晴
3:00)起床、外は満点の星空、月明かりでヘッドランプもいらないくらいだ。風少しあり、朝食と身支度をすませ(4:40)テント場を発ち、真砂に向けて出発する。後方に他のパーテ
が続く、剱沢の雪渓の下を流れる水の音が大きく聞こえている。
(5:02)登山道が雪渓に入るところでアイゼン(六本爪)装着、これより雪渓を下る。スプーンカットされた雪面をとらえるアイゼンの爪が、心地よく効く。
(5:21)ほどなくして目印の大岩が見えてきます、源治郎尾根への取り付き地点は大岩の先です、この大岩は平蔵谷の出口にデ〜ンと座っています。
(5:24)大岩の左手に平蔵谷が上方までも見えます。
(5:21)大岩の先の草付の斜面に、源治郎尾根への登りの踏み跡がはっきりと見えます。(5:25)源治郎尾根取付地点到着、アイゼンを外しカッパを脱ぐ、これより草付の急斜面を登っていきます。足元が滑るので、落石を起こさない様に、周りの草を掴んで慎重に登ります。
(5:34)すぐに短い岩場が見えてくる、ここで先行のパーテがザイルを出していた、岩が濡れているせいか、慎重だ。しばらく停滞、我々の順番、F(L)が先に登り、私も手足が滑るがなんとか登りきる。この後、先のパーテが道を譲ってくれた。
しばらくは、急傾斜の低灌木地帯を、ハイマツの枝やナナカマド、ダケカンバなどの枝を掴んで、時にまたいだり、下をくぐったりと、まるでジャングル探検のようだ。
T峰の登りに右にルンゼ(写真のV字状の溝)を登るルートもあるが、落石に苦労しているようだった、左側の尾根コースが安全。
三級程度(と思われる)の岩場でも、サイドが切れ込んでいて緊張する場所が何箇所かあった。
(6:49)明るい尾根に出た、T峰の菱形の大垂壁が左真上に見える。ここまで二度距離は短いが安全のためにザイルを出してもらった。ここからの尾根の踏み跡ラインは、テント場からでも目視で確認出来た場所だろう、ここで小休止。快晴!
草つきの斜面を登る。
チムニー(割れ目)や草付の急斜面を進む。
回り込んだところで、いきなり目の前に現れるテント場からも見えたあの独特なノコギリ型のライン。この場所から見ると、巨大なノコギリの刃という表現がぴったりです。
八ツ峰の五峰、それに六峰のA・B・Cフェースと独特な針峰群が連なります。
さらにフェースを詰めます。
堂々とした本峰!
八ツ峰上部が素晴らしい、足元にはスキー場のように広い長次郎谷、その谷の底に、何組ものパーテが列をなしているのがまるで蟻のようです。
雪渓中央には巨大な「熊ノ岩」がデンと(熊の手を置いているように見える)、長次郎谷を見下ろしている。熊ノ岩から長次郎谷左俣・右俣(池ノ谷乗越へと続く)に別れ、互いに、はるか稜線まで雪渓がのびる。
(7:41)T峰の頭に到着、正面にU峰、その奥に堂々とした本峰
切れ込み部が5・6のコル、6峰のAフェースにクライマーが取り付いているのが見えます。
コルから左に6峰のA,B,Cフェース、巨大なサメの歯を少し傾げて、いくつも突き立てた感じだ。
長次郎谷左俣
(7:50)T峰を下り、正面にU峰の登りのラインを見る、かなり急峻でハイマツの生え際を登ります。
U峰の登りにかかる、ハイマツの枝を掴んで登ろう。
八ツ峰の6峰・7峰・8峰・それに8峰の頭と独特な針峰群が大きく連なる。熊ノ岩のふもとに、数張りのテントが見える。
(8:10)U峰の頭に到着、小休止。後ろを振り返れば、遠く名前はわからない峰々がいくつも肩を並べている。
(8:25)U峰懸垂下降地点に到着。U峰の懸垂下降地点には太いクサリがあり、それに数本のスリングが残置されている。この残置スリングが、信頼出来るものか十分確認してザイルをかけよう。
U峰の懸垂下降の長さは、いろいろな情報があったが、50mのザイルをダブルにして、ぴったりだった。忘れず、二本のザイルの端はしっかりと結んでおこう。
待ち時間はなく、すぐに懸垂下降の準備にかかる。(他のパーテがあると順番待ちになる)F(L)が手早くザイルをセットし(50mをダブルにして)早々に下降していく。続いて私が、下に声を掛け下降開始、あっという間にテラスに着地、高度感もあってスリリングな懸垂下降。ザイルを回収、テラスより数歩歩いて、前の岩に飛び移り、コルに到着、ここでザイルを巻く。
コルより先は本峰への急なガレ場の登りになります、落石に注意し、ガス等特に視界が悪いときは、迷いやすいので、慎重にルートを探そう。
本峰への急なガレ場の登り、振り返ってみた源治郎尾根、T峰、U峰がちょうど重なって見えます。
本峰から剣山荘に向けて一般ルートを下山中、源治郎尾根のT峰、U峰を横から見ています。
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